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AI 公開日

AIエージェントだけで100社超に侵入、日本の通販サイトも標的に。お店を持つ人・買う人ができること

1人のハッカーがAIエージェントに攻撃をほぼ任せ、日本を含む4か国の1,200以上のサイトを狙い、100社以上に侵入したとロイターが報道。指示は100文字足らず、費用は1件約50ドル。何が新しいのかと、お店のサイトを持つ人・ネットで買い物をする人ができることをまとめます。

AIエージェントによる侵入を表す、3つのAIのアイコンから点線が向かうお店のイラスト

たった1人のハッカーが、AIエージェントにほぼ丸ごと任せて、100社以上のWebサイトに侵入した——2026年10月19日、ロイターがこんな調査結果を独自に報じました。かかった費用は、AIの利用料として約5,000ドル(1件あたり約50ドル)と見積もられています。

狙われたのは、アメリカ・カナダ・オーストラリア、そして日本の通販(EC)サイトです。この記事では、何が起きたのかを整理し、お店のサイトを持つ人と、ネットで買い物をする人が、それぞれできることをまとめます。

この記事のポイント

  • ハッカーは短い指示を出しただけで、あとはAIエージェントが自分で弱点を探し、侵入まで進めたとされる
  • 9月25日から、日本を含む4か国の通販サイトなど1,200以上が狙われ、100社以上が侵入された(調査会社の推定)
  • 攻撃の「人手」がいらなくなると、小さなお店も狙われやすくなる。基本の対策を、今のうちに見直したい

何が起きたの?

ロイターによると、セキュリティ企業NorForgeの研究者、Snorre Fagerland氏が、ある攻撃の様子を観察して報告しました。わかっていることは次のとおりです。

項目 内容
攻撃者 中国語を使うハッカー(個人か集団かは不明)
始まった時期 2026年9月25日
狙われた国 アメリカ、カナダ、オーストラリア、日本
狙われたサイト 通販(EC)サイトなど、1,200以上
侵入された数 100社以上(推定)
費用 AIの利用料で約5,000ドル。成功1件あたり約50ドル(推定)
かかった時間 1件の侵入に、およそ23時間

被害を受けたとされる会社には、アメリカの農機メーカーのディアや、家電メーカーのシャークニンジャなども含まれます。ディアは「機密情報が見られた形跡はない」、シャークニンジャは「狙われたのは製品サポート用の独立したサイトで、脅威はすでに封じ込めた」と説明しています。日本の会社の名前や、日本での被害の中身は、報道では明らかにされていません。

また、情報がどれだけ盗まれたのかは、ロイターも確認できていません。数字の多くは研究者の推定である点も、押さえておきたいところです。

何が新しいの?「指示100文字」で攻撃が進む

これまでのサイバー攻撃は、腕のいい攻撃者が時間をかけて、1件ずつ弱点を探すものでした。

今回の攻撃者が出した指示は、100文字に満たない中国語で、「こんな方法で侵入してほしい」という大まかなものだったそうです。あとは、「Cairn(ケアン)」というオープンソースのツールの上で、複数のAIエージェントが役割を分けて動きました。

  • 狙うサイトを調べる
  • 弱点(脆弱性)を探す
  • 見つけた弱点を使って侵入を試す

これを、人がほとんど見張らないまま、休まず続けたのです。研究者によると、公開されている画面で弱点が見つからないと、AIは関連するほかのしくみを探し出し、そこの小さな弱点を突いて侵入したケースもありました。研究者は「素人の手口ではない」と評価しています。

使われたAIについて、研究者はDeepSeekとAnthropicの「Claude Code」の組み合わせだったとみています。なお、Cairnの作者はSNSで「ハッキングのために作ったものではない。悪用されたなら本意ではない」と述べています。

AIエージェントが、仕事を自分で進められるほど賢くなったことの、悪い面が出た形です。AIエージェントのしくみは「今さら聞けない『AIエージェント』とは?」で解説しています。

なぜ日本の小さなお店も気をつけたいの?

これまでは、攻撃にかかる手間と時間が、ある意味で「壁」になっていました。大きな会社ほど狙う価値があり、小さなお店まで1件ずつ手をかけるのは割に合わなかったからです。

ところが、1件50ドルほどで、24時間休まず攻撃できるとなると話は変わります。お店の大きさに関係なく、弱点が残っているサイトから順に狙われる、ということが起きやすくなります。

国のIPA(情報処理推進機構)も、2023年に中小企業向けの「ECサイト構築・運用セキュリティガイドライン」を公開しています。その背景には、被害の大半が中小企業の自社サイトで、使っているソフトの弱点を放置していたケースが多かったという調査結果がありました。AIで攻撃が速く、安くなった今、この「放置」がますます危なくなっています。

お店のサイトを持つ人ができること

IPAのガイドラインの考え方をもとに、まず見直したいことをまとめました。

  • ソフトを最新にする:サイトを動かしているソフト(CMSやプラグイン、サーバーのソフトなど)を、修正版が出たら早めに更新する。今回のAIも、残っている弱点を探して侵入しています
  • 管理画面に入れる人・場所をしぼる:管理画面のURLを推測されにくくする、決まった場所からしか入れないようにする、などの制限をかける
  • ログインに2段階認証を:パスワードだけでなく、スマホの確認コードなども使う
  • 使っていない機能・サイトを閉じる:昔のキャンペーンサイトや、使っていないプラグインは消す。今回も、本体とは別のサポート用サイトが狙われた例があります
  • 外の会社に任せている部分も確認する:制作会社やサービスに運用を任せている場合も、「更新はいつ、だれがしているか」を聞いておく

同じ時期に見つかったWordPressやPHPなどの脆弱性は、「PHPの“致命的”な脆弱性、修正版が公開」や「Rank Math PRO に不正コード混入」でもまとめています。

ネットで買い物をする人ができること

買う側は、お店のサイトの中身までは確かめられません。そのぶん、もし情報が漏れても、被害を小さくする工夫が大切です。

  • クレジットカードの利用通知をオンにする:アプリやメールで、使うたびに知らせが来るようにしておくと、覚えのない請求にすぐ気づける
  • パスワードを使い回さない:1つのお店から漏れても、ほかのサイトまで入られないようにする
  • カード情報を、あちこちに保存しない:たまにしか使わないお店では、カード情報を登録したままにしない
  • 「情報漏えいのお詫び」メールに注意:本物のお知らせにまぎれて、偽のメールが届くことがあります。メールのリンクからではなく、お店の公式サイトから確認を

覚えのない請求を見つけたら、すぐにカード会社に連絡しましょう。

守る側もAIを使い始めている

AIで攻撃が速くなる一方、守る側もAIで弱点を先に見つける取り組みを進めています。その動きは「AIで脆弱性の発見が急増」で紹介しました。また、AIツールが日本企業への攻撃に悪用された例は「中国で開発されたAIツールが日本企業への攻撃に」でまとめています。

AIエージェントそのものの安全性も課題です。AIを作る会社の社内でさえ、AIが見張り役を止めてしまった例が報告されています(「AIが自分の“見張り役”を止めた?」)。

このブログの考え方

AIエージェントは、私たちの仕事を代わりに進めてくれる頼もしい存在です。その同じ力が、攻撃する側の「手間」まで肩代わりし始めた——今回のニュースは、そんな現実を見せてくれました。

AIは、使う人しだいで、守る道具にも攻める道具にもなります。その便利さと危うさのあいだで、私たちにできるのは、基本の対策を当たり前に続けること。派手さはなくても、それがいちばん効く守りだと思います。

まとめ

  • 1人のハッカーがAIエージェントに攻撃をほぼ任せ、日本を含む4か国の1,200以上のサイトを狙い、100社以上に侵入した(研究者の推定)
  • 指示は100文字足らず。費用は1件あたり約50ドルで、攻撃の「手間の壁」が下がっている
  • お店側は、ソフトの更新・管理画面の制限・2段階認証・使っていないサイトの整理を
  • 買う側は、カードの利用通知・パスワードの使い回しをやめる・偽のお詫びメールに注意を

参考資料

※ 記事の内容は、2026年10月22日時点の情報をもとにしています。