「ゼロクリック68%」は2つある?日本と米国の調査の違いと、読む側・書く側にできること
話題の「検索の68%がゼロクリック」。実は日本(ヴァリューズ)と米国(SparkToro)で別々の調査があり、定義も対象も違います。数字の正しい読み方と、検索する人・記事を書く人それぞれにできることをまとめました。
「検索の68%がゼロクリック」というニュースが、2026年10月に話題になりました。調べものが検索結果の画面だけで完結してしまう、という話です。
ただ、この「68%」という数字、実は日本の調査と米国の調査で、ほぼ同じ値が別々に出ています。しかも、何を数えているのかが違います。この記事では、まず2つの数字を整理してから、検索する側(読む人)と、記事を書く側のそれぞれにできることをまとめます。
この記事のポイント
- 日本の「68.1%」は、ヴァリューズが約250万人の行動ログから出した数字
- 米国の「68.01%」は、SparkToro による、データ元も定義も異なる別の調査
- どちらも「68%の人がサイトを見なくなった」という意味ではない
ゼロクリックとは?
ゼロクリックとは、検索したあと、検索結果のページだけで用が済み、ほかのサイトを開かずに終わることです。
天気や乗り換え案内のように、検索結果の画面に答えがそのまま出るものは、以前からゼロクリックになりがちでした。そこに、検索結果の上部に、AI による回答のまとめを表示する「AI による概要」(AI Overviews)が登場したことで、より複雑な質問でも、画面の中で済むことが増えています。日本では、この AI による概要が2024年8月に始まりました。
日本の「68.1%」:ヴァリューズの調査
今回話題になったのは、日本経済新聞が2026年10月に報じた、ヴァリューズ(東京・港区)の調査結果です。
- データ:約250万人の消費者パネルによる、ウェブの行動ログ
- 数えたもの:検索したあと、外部のサイトに移動せずに情報収集を終えた割合
- 結果:2025年9月の63.5%から、2026年7月には68.1%に上昇
10か月ほどで、およそ4.6ポイント増えた計算です。記事では、背景として AI による要約表示の広がりが挙げられています。
米国の「68.01%」:SparkToro の調査
もう一つの「68%」は、米国の SparkToro(スパークトロ)による調査で、2026年6月にブログで発表されました。分析したのは共同創業者のランド・フィッシュキン氏で、元データは Similarweb が集めたパソコンとスマホのブラウザの閲覧記録です。
- 対象:2026年1月から4月までの、米国の Google 検索
- 数えたもの:何もクリックされずに終わった検索の割合(新しく検索し直した場合は、クリックに数えない)
- 結果:68.01%。2024年の同様の調査では60.45%だった
- 注意点:スマホの Google アプリでの検索は含まれていません。調査した本人も、アプリを含めれば数字はもっと高くなるだろうと書いています
2つの「68%」はここが違う
数字がほぼ同じなので混同されがちですが、比べると別物だとわかります。
| 日本(ヴァリューズ) | 米国(SparkToro) | |
|---|---|---|
| 発表 | 2026年10月(日本経済新聞が報道) | 2026年6月(同社のブログ) |
| データ | 約250万人の消費者パネルの行動ログ | Similarweb の閲覧データ |
| 対象 | 日本の検索行動 | 米国の Google 検索(Google アプリは含まない) |
| 期間 | 2025年9月 → 2026年7月 | 2026年1〜4月 |
| 数えたもの | 外部サイトに移動しなかった割合 | 何もクリックされなかった割合 |
| 数字 | 68.1% | 68.01% |
大きな違いは「何をクリックとみなすか」です。米国の調査では、Google マップや YouTube など **Google 自身のサービスへのクリックも「クリックあり」**に数えています。日本の調査は「外部サイトに移動したか」を見ています。
同じ「68%」でも、定義・国・期間・データの集め方がすべて違うので、2つを足したり、並べて「日米とも68%」とまとめたりするのは誤解のもと。偶然、近い値になったと考えるのが自然です。
「68%の人がサイトを見ない」わけではない
ニュースの見出しだけを見ると、「もう誰もサイトを読まない」と受け取ってしまいそうです。数字を読むときは、次の3つに注意が必要です。
1. 人の割合ではなく、検索の割合
数えているのは「検索1回ごと」です。同じ人でも、天気を調べたときはゼロクリック、旅行先を調べたときは何本も記事を読む、ということは普通にあります。
2. ゼロクリックは「満足した」とは限らない
検索結果で答えがわかって満足したケースもあれば、欲しい情報が見つからず、言葉を変えて検索し直したり、あきらめたりしたケースも含まれます。米国の調査でも、前回(2024年)より「検索し直す」割合が増えたと報告されています。
3. 調査ごとの数字は比べられない
ゼロクリックの調査は、データの集め方や対象によって、数字が大きく変わります。一つの数字だけで「検索はもう終わった」と判断するのは早すぎます。
検索する側にできること
AI による概要は便利ですが、まとめた内容が正しいとは限りません。次のような場面では、要約の下にある元の記事や公式サイトを開いて確かめるのがおすすめです。
- お金に関わること:料金、手数料、ポイントの条件など
- 健康や安全に関わること
- 最新の情報が大事なこと:発売日、キャンペーン、規約の変更など
- 買い物の判断:スペックや価格は、販売ページで最終確認
要約は「どの記事を読むべきか」を見つけるための入口として使い、最後の判断は元の情報で、というのが安心な使い方です。
書く側(サイト運営者)にできること
クリックが減っても、記事を書く意味まで消えたとは思いません。
- 特別な「AI 対策」より基本が大事:Google は公式ドキュメントで、AI による概要などに載るために、新しく何かを満たしたり専用の工夫をしたりする必要はないとしており、これまでの SEO の基本が大切だと説明しています
- クリックする理由を用意する:実際に使ってみた感想、写真、比較表、自分で確かめたデータなど、要約では伝わりきらない内容
- 出典と日付をはっきり書く:いつの、誰の情報なのかがわかる記事は、読者にとって信頼できる材料になります
- アクセス数だけで判断しない:Google の無料ツール「Search Console」を使い、検索順位は変わらないのにクリックだけ減っているキーワードがないかを見ると、ゼロクリックの影響に気づきやすくなります
このブログの考え方
このブログ「あいださん」は、ゼロクリックが話題になる中で始めたばかりの個人ブログです。正直に言えば、「今から始めて読んでもらえるのかな」という不安もあります。
それでも、Google が「AI のための特別な対策はいらない、これまでの SEO の基本でいい」と言っているのなら、その言葉を信じて、基本に沿って書いていこうと思っています。
そのうえで大事にしたいのが、ほかの誰とも取り替えのきかない実体験です。スペックや一般的な説明は、AI の要約でもわかります。でも、Web 制作の現場で10年過ごしてきた目で見て感じたこと、ガジェットを実際に使って「ここは良い」「ここは惜しい」と思ったこと、アニメやゲームを観て心が動いたこと。こうした話は、その人が書かない限り、どこにも出てきません。
実はこのブログの仕組み(CMS)も、AI と相談しながら自分で作っています。AI はとても便利ですが、全部を任せてしまうことには、少し葛藤もあります。だからこそ、AI にまとめられる部分は AI に任せて、自分にしか書けない部分を、出典と日付をつけて書く。要約を読んだあとに「この人の話も読んでみたい」と思ってもらえる記事を目指します。
まとめ
- 日本の「68.1%」(ヴァリューズ)と米国の「68.01%」(SparkToro)は、別々の調査で、定義も対象も違う
- どちらも「検索1回ごと」の割合で、「68%の人がサイトを見ない」という意味ではない
- 読む側は、お金・健康・最新情報・買い物では、元の情報を確かめる
- 書く側は、特別な対策より、体験や一次情報など「クリックする理由」のある記事を
参考資料
- AI検索普及、ゼロクリック率68%に上昇 揺らぐサイト集客(日本経済新聞、2026年10月。会員限定記事)
- In 2026, Less than One Third of Google Searches Still Send a Click(SparkToro、2026年6月9日。英語)
- AI 機能とウェブサイト(Google 検索セントラル)
- AI による概要 : ウェブにつながる新しい方法(Google Japan Blog、2024年8月16日)
※ 記事内の数値は、2026年10月20日時点で上記の資料から確認したものです。



