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IT・Web 公開日

認証局「eMudhra」に重大な欠陥、httpsの“鍵”が誰でも割り出せる状態に。私たちへの影響と、更新しておきたいもの

インドの認証局eMudhraで、httpsの証明書を支える8つの秘密鍵が1〜255の数字になっていて、誰でも割り出せる状態だったことがわかりました。何が起きたのか、悪用の心配はあるのか、立場別にやること(OS・ブラウザ・アプリ・開発環境の更新)をまとめました。

https の鍵マークが付いたブラウザの画面と、注意マークの付いた鍵。eMudhra の認証局の鍵の欠陥を表したイラスト

インドの認証局「eMudhra(イーマドラ)」で、セキュリティの重大な欠陥が見つかりました。Webサイトの「鍵マーク(https)」を支える大事な“鍵”が、誰でも計算で割り出せる状態になっていたのです。

「httpsの鍵マークは、もう信用できないの?」と不安に思った人もいるかもしれません。この記事では、何が起きたのかをかみくだいて説明し、私たちへの影響と、念のため更新しておきたいものをまとめます。

この記事のポイント

  • eMudhraが2025年4月に作った8つの「中間証明書」の鍵が、ごく小さな数字になっていた。最大でも256回試せば当てられる
  • 悪用されると、どんなサイトにもなりすませるおそれがあった。ただし、悪用された証拠は今のところ見つかっていない
  • Chrome・Firefox・Apple・Microsoftはすでにブロック済み。ふつうの人は、OS・ブラウザ・アプリを最新にしておけば大丈夫
  • eMudhraは10月22日、世界向けのhttps証明書の事業から撤退すると発表した

そもそも「認証局」とは?

サイトのアドレスが「https」で始まり、鍵マークが付いているとき、ブラウザは裏側で「このサイトは本物か」を確かめています。そのときの身分証明書にあたるのが「証明書」で、証明書を発行する会社が「認証局」です。

認証局のしくみは、本店と支店にたとえるとわかりやすくなります。

  • ルート証明書(本店):ブラウザやOSに、最初から「信用してよい」と登録されている
  • 中間証明書(支店):本店からお墨付きをもらい、実際に各サイトの証明書を発行する
  • サイトの証明書:支店が「このサイトは本物です」と発行したもの

支店が持つ「判子」にあたるのが秘密鍵です。この判子があれば、本店のお墨付きつきで証明書を発行できます。つまり、秘密鍵が他人の手に渡ると、偽物のサイトに“本物の証明書”を付けられてしまうのです。

何が起きたの?

鍵が「1〜255の数字」だった

本来、秘密鍵は100けたを超える、でたらめな数字で作ります。だれにも当てられないことが、安全の前提です。

ところが、eMudhraが2025年4月に作った中間証明書のうち8つは、秘密鍵が256より小さい数字になっていました。Mozillaによると、鍵はどれも256未満で、すぐに割り出せたといいます。最大でも256通りを試せば当たってしまうので、判子を誰でも複製できたのと同じ状態です。

eMudhraの説明では、鍵を作る作業の途中で手順を一部変えたところ、プログラムの不具合で「弱い鍵」がもう一組作られてしまいました。それを担当者が取り違えて使ってしまったといいます。社内のシステムが侵入されたわけではなく、人の作業ミスが重なったという説明です。

8つの中間証明書の内訳

種類 数 何に使うものか
サイト用(TLS) 6つ httpsの証明書を発行する
ソフトの署名用(コード署名) 2つ 「このソフトは正規の開発元のもの」と示す署名を発行する(Microsoftが信用していた)

あわせて、別の認証局Sectigoが、この中間証明書に“お墨付き”を重ねて付けた証明書(クロス署名)も対象になっています。

これまでの流れ

日付 できごと
2025年4月 問題の中間証明書が作られる(このときから鍵は割り出せる状態)
2026年10月17日 研究者が、8つの鍵を実際に使ってみせたうえで各社に報告。ChromeとFirefoxがすぐにブロック
10月18日 eMudhraが8つの中間証明書を失効させる
10月19日 Appleが自動でブロックを始める
10月20日 Microsoft(Windows)がブロック。Mozillaが問題を公表し、本店にあたるルート証明書の信用も取り消すと発表
10月22日 eMudhraが、世界向けのhttps証明書の事業から撤退すると発表
10月23日 Appleも、ルート証明書をブロックの対象に加える
10月27日(米国時間) Chromeも、ルート証明書の信用を外す予定

※ 日付は各社の発表にもとづきます。日本時間では翌日にあたるものもあります。

実際に悪用されたの?

今のところ、悪用された証拠は見つかっていません。理由は主に3つあります。

  • eMudhraは、問題の中間証明書から、お客さん向けの証明書は発行していないと説明している
  • ChromeやSafariなどのブラウザは、発行された証明書を「公開の記録帳(Certificate Transparency)」に載せていないと受け入れない。そして、問題の期間に、この中間証明書による記録は見つかっていない
  • Cloudflareも、自社のサービスで悪用は見られなかったとしている

ただし、鍵が弱い状態は約1年半続いていました。ブラウザ以外のアプリや機器の中には、記録帳を確かめないものもあります。そうした場所で悪用されたかどうかは、はっきりしていません。だからこそ、各社は急いでブロックしたわけです。

自分は関係ある?

あなたの立場 関係するか やること
スマホやパソコンでWebを見るだけ 主要なブラウザはブロック済み OS・ブラウザを最新にしておく
パソコンにアプリを入れて使っている アプリによっては関係する アプリの更新が来たら早めに当てる
開発やサーバーの仕事をしている 関係する 「信用する証明書の一覧」を更新する(下で説明)
サイトを運営している eMudhraの証明書を使っていなければ、基本的に関係ない 使っていたら、ほかの認証局の証明書に切り替える

スマホ・パソコンでWebを見るだけの人

Chrome・Firefox・Safariは、すでに問題の証明書をブロックしています。Windowsも、10月20日から自動の更新でブロックしています。Appleは、iPhone・iPad・Macで自動でブロックしていて、ソフトウェアアップデートも不要としています。

とはいえ、更新を長く止めていると、こうした守りが届かないことがあります。OSとブラウザを最新にしておく。ふつうの人がやることは、これで十分です。

パソコンにアプリを入れている人

意外と見落としがちなのが、パソコン用のアプリです。アプリの中には、ブラウザやOSとは別に**「信用する証明書の一覧」を自分の中に持っているもの**があります。たとえば、SlackやDiscordのように「Electron」という部品で作られたアプリは、アプリ側の更新が必要です。

有志がまとめた一覧(10月26日時点)では、すでに対応版が出たものとして、次のようなアプリが挙がっています。

アプリ 対応版
Visual Studio Code 1.143.1
Docker Desktop 4.96.2
Obsidian 1.14.5
Tailscale 1.104.2
Plex Media Server 1.43.5.11079

Plex Media Serverは、少し前に乗っ取りの脆弱性も話題になったばかりです。使っている人は、あわせて最新版になっているか確かめておきましょう。

開発やサーバーの仕事をしている人

サーバーや開発の道具は、ブラウザの「ブロックの一覧」を使わないものが多く、更新しない限り、問題の証明書を信用したままです。次のようなものを更新しましょう。

  • サーバーのOS:UbuntuやDebianなどの「ca-certificates」(信用する証明書の一覧)
  • プログラミング言語:Node.js(22.23.4/24.22.1/26.12.1)、Go(1.26.10/1.27.3)、Pythonの「certifi」(2026.10.19)など
  • Macのターミナル:curlやgitなどは、Appleの今後のアップデートまで、一部の証明書を受け入れることがあります。Appleは、急ぐ場合の手順(/etc/ssl/cert.pem から該当するルート証明書を消す)をサポート記事で案内しています

Node.jsの修正版は、10月21日に出たセキュリティの修正とまとめて配られています。くわしくはNode.jsの脆弱性の記事をどうぞ。サーバーで更新したあとは、動いているサービスの再起動も忘れずに。

Cloudflareは、「更新後に証明書のエラーが出ても、確認をオフにしてごまかさないように」と呼びかけています。エラーは、守りが効いている証拠でもあるからです。

サイトを運営している人

日本で一般的なレンタルサーバーの無料の証明書などは、eMudhraとは別の認証局のものです。eMudhraの証明書を自分で買って使っていなければ、基本的に関係ありません。

もし使っている場合は、Chromeがルート証明書の信用を外したあと、サイトに警告が出るようになるおそれがあります。eMudhraは、影響を受けるお客さん(約3万件の証明書)に連絡し、提携先の証明書に無料で切り替えるとしています。

eMudhraはどうなる?

eMudhraは10月22日、世界向けのhttps証明書の事業から撤退すると発表しました。売上の約1%にあたる小さな事業だとしています。インド国内の電子署名などのサービスは、これまでどおり続けるとのことです。

一方、ChromeやMozillaは、原因のくわしい説明をeMudhraに求めています。鍵を作る作業の記録や、ほかの鍵に同じ問題がないかなど、調べるべきことはまだ残っています。

このブログの考え方

このブログも、ふだんから鍵マーク(https)で表示しています。証明書は、無料のものを自動で取ってくるしくみに任せていて、正直に言えば、どこの認証局がどう作った鍵なのかまで意識したことはありませんでした。

鍵マークの安心は、ブラウザやOSの会社と、世界中の認証局との信頼の積み重ねで成り立っています。今回は、その一か所がゆるんでいても、ブラウザの会社がすぐに気づいてふさぎました。しくみを全部理解していなくても、更新さえ止めなければ守ってもらえる。目に見えないところで働く安全のしくみと、私たちの毎日。その二つのあいだをつないでいるのが、ふだんの地味なアップデートなのだと思います。

まとめ

  • インドの認証局eMudhraの中間証明書8つで、秘密鍵が1〜255の数字になっていて、誰でも割り出せる状態だった
  • 悪用されると、どんなサイトにもなりすませるおそれがあった。悪用の証拠は今のところない
  • Chrome・Firefox・Apple・Microsoftはブロック済み。ふつうの人はOS・ブラウザ・アプリを最新にしておけばよい
  • 開発やサーバーの仕事をしている人は、ca-certificatesやNode.js・Go・Pythonなどの更新を
  • eMudhraは世界向けのhttps証明書の事業から撤退する

参考資料

※ 記事の内容は、2026年10月26日時点の情報をもとにしています。